25.02.21
活動報告
実施報告
アイセック・ジャパンでは日本の学生を海外のNGO・NPO期間に研修生として送り出す、送り出し事業を運営しております。2024年夏には、54名の学生を送り出し、2025年春には約70名の学生を送り出し予定です。研修での学びを深める一環として、同じ時期に研修に参加する学生が集う事前研修を実施しております。2025年1月18日に、合同会社メッシュワークの創業者であり人類学者の水上優様にご登壇いただきました。
事前研修の背景と目的
アイセックジャパンの海外研修プログラムでは、学生が異文化環境に身を置き、社会課題の解決に向けて実践的な活動を行います。しかし、実際の現場では、想定していた計画通りに物事が進まないことが多く、文化的な価値観の違いや予期せぬ出来事に直面することも少なくありません。本研修では、海外研修における学びが単なる知識のインプットではなく、異文化の中での実践と対話によって深まるものとなるように人類学の視点から学びました。
ご登壇の内容
水上様からは、人類学的視点から「想定外への向き合い方」についてお話いただきました。人類学は他者と出会う学問であり、異文化の環境での学びにおいて重要な視点を提供するものです。
水上様は自身のフィールドワーク経験をもとに、失敗や葛藤を通じて思い込みが崩されたことから学んだことを共有してくださいました。想定外の出来事を、「自身の価値観や前提の認識を問い直す機会」として捉えることの重要性を学びました。
また、「現場の人々を対象化せず、真剣に受け取るには?」という問いについても人類学的視点から考えました。他者を研究対象や支援すべき存在として一方的に捉えるのではなく、相手の生きる文脈を尊重しながら対話する姿勢が求められることを学びました。この視点はインターン期間だけでなく、帰国後も続くものです。
さらに、研修後には、現地で得たインサイトを「Impact Report」として執筆する取り組みを行っています。そのため、学生が自らの経験を深く振り返り、他者と共有できる形に落とし込むことを目指し、エスノグラフィーの手法のひとつである参与観察に関するインプットも行いました。
本セッションから、参加者は「異文化の現場で何を学ぶべきか?」を改めて考える機会を得ることができました。
感想
事前研修に参加した学生の感想をご紹介いたします。
・現地で見つけた違和感などについて「良い悪い」を判断するのではなく、その違和感に自分が気付いたということに重きを置くべきだという助言を活かしてみたい。
・人類学を初めて聞きました。とても興味深かったです。まず、一歩立ち止まって観察から始めること。その場の勢いで話してしまわないこと。それを気をつけたいと思いました。
今後の展望
アイセック・ジャパン送り出し事業部は今後も「平和で人々の可能性が最大限発揮された社会」の実現をめざし、送り出し事業を通じて若者同士の相互交流・挑戦機会を創出していきます。
参加学生が現地で得たインサイトをまとめた「Impact Report」の発信も予定しています。これを通じて、異文化環境での経験を社会に還元し、より多くの人々に気づきを提供できればと考えています。その取り組みを支えるため、皆さまからの応援の寄付もお待ちしております。
また、メッシュワークと今後も協力を深めながら、学生が「想定外と向き合い、他者と共に生きる力」を養う機会をさらに充実させていきたいと考えています。